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 『婦系図』 青空文庫

「大目に見てお上《あげ》なすって下さいまし。蔦吉さんも仇な気じゃありません。決《け》して早瀬さんのお世帯の不為《ふため》になるような事はしませんですよ。一生懸命だったんですから。あんな派手な妓《こ》が落籍祝《ひきいわい》どころじゃありません、貴郎《あなた》、着換《きがえ》も無くしてまで、借金の方をつけて、夜遁《よに》げをするようにして落籍《ひい》たんですもの。
 堅気に世帯が持てさえすれば、その内には、世間でも、商売したのは忘れましょうから、早瀬さんの御身分に障るようなこともござんすまい。もうこの節じゃ、洗濯ものも出来るし、単衣《ひとえもの》ぐらい縫えますって、この間も夜晩《おそ》く私に逢いに来たんですがね。」

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