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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「それではお暇いたしましょう。稚《おさな》い事を、貴僧《あなた》にはお恥かしいが、明さんに一式のお愛相《あいそ》に、手毬をついて見せましょう、あの……」
 と掛けた声の下。雪洞《ぼんぼり》の真中を、蝶々のように衝《つ》と抜けて、切禿で兎の顔した、女の童が、袖に載せて捧げて来た。手毬を取って、美女《たおやめ》は、掌《たなそこ》の白きが中に、魔界は然りや、梅の大いなる莟と掻撫でながら、袂のさきを白歯で含むと、ふりが、はらりと襷にかかる。

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