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 『婦系図』 青空文庫

「そう仰有《おっしゃ》って下さいますのも、世間を思って下さいますからでございます。もう、私は、自分だけでは、決心をいたしまして、世間には、随分一人前の腕を持っていながら、財産を当に婿養子になりましたり、汝《てまえ》が勝手に嫁にすると申して、人の娘の体格検査を望みましたり、」
 と赫《かっ》となって、この時ややの色が眉宇《びう》に浮んだ。
「女学校の教師をして、媒妁《なこうど》をいたしましたり……それよりか、拾人《ひろいて》の無い、社会の遺失物《おとしもの》を内へ入れます方が、同じ不都合でも、罪は浅かろうと存じまして。それも決して女房になんぞ、しますわけではございません。一生日蔭ものの下女同様に、ただ内証《ないしょう》で置いてやりますだけのことでございますから。」

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