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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「それはお前様、あの徒《てあい》と申しますものは、………まあ、海へ出て岸をば〓《みまわ》して御覧《ごろう》じまし。巌《いわ》の窪みは何処も彼処も、賭博《ばくち》の壺に、鰒《あわび》の蓋。蟹の穴でない処は、皆意銭《あないち》のあとでござります。珍しい事も、不思議な事もないけれど、爾時《そのとき》のは、はい、嘉吉に取っては、あやかしが着きましたじゃ。のう、便船しょう、便船しょう、と船を渚へ引寄せては、巌端《いわばな》から、松の下から、飜然々々《ひらりひらり》と乗りましたのは、魔がさしたのでござりましたよ。」
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