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 『古狢』 青空文庫

 それと、戸前《かどさき》が松原で、抽《ぬきん》でた古木もないが、ほどよく、暗くなく、あからさまならず、しっとりと、松葉を敷いて、松毬《まつかさ》まじりに掻《か》き分けた路も、根を畝《うね》って、奥が深い。いつも松露の香がたつようで、実際、初茸《はつたけ》、しめじ茸は、この落葉に生えるのである。入口に萩の枝折戸《しおりど》、屋根なしに網代《あじろ》の扉《と》がついている。また松の樹を五《いつ》株、六《む》株。すぐに石ころ道がく続いて、飛地のような町屋の石を置いた板屋根が、山裾に沈んで見えると、そこにその橋がある。

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