検索結果詳細


 『海神別荘』 華・成田屋

男は死ななかった。存命(ながら)えて坊主になって老い朽ちた。娘のために、姉上はそれさえお引取りになった。けれども、その魂は、途中で牡の海月になった。――時々未練に娘を覗いて、潮に追払われて、醜く、ふらふらと生白く漾うて失する。あわれなものだ。娘は幸福(しあわせ)ではないのですか。火も水も、火は虹となり、水は滝となって、彼の命を飾ったのです。抜身の槍の刑罰が馬の左右に、その誉を輝かすと同一(おんなじ)に。――博士いかがですか、僧都。

 147/369 148/369 149/369


  [Index]