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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 短銃《ピストル》の筒口に濃き煙の立つと同時に泰助が魂消《たまぎ》る末期の絶叫《さけび》、第三発は命中せり。
 渠は立竦みになりてぶる/\と震へたるが、鮮《なまち》たら/\と頬に流れつ、抱きたるお藤を〓《どう》と投落して、屏風の如く倒れたり。
 其と見て駈け寄る二人の悪僕、得三、高田、お録もろとも急ぎ内より出で来りぬ。高田はお藤を抱き上げて、「おゝ、可哀相に嘸《さぞ》吃驚《びつくり》したらう、既《すん》でのことで悪漢《わるもの》が誘拐《かどはか》さうとした。もう好い哩《わい》、泣くな/\。と背《せな》掻撫《かいな》でて劬《いたは》れば、得三もほつと呼吸《いき》、「あ、好かつた。何者だ、大胆な、人形が声を出したのに度胆を抜かれた処へ幕の後《うしろ》から飛出しやあがつて、真個《ほんとに》驚いたぜ。お録、早く内へ連れて行きな。「へい承《かしこま》りました。と高田の手よりお藤を抱取り肩に掛けて連れて行く。

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