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『薬草取』 青空文庫
其処《そこ》にこの山があるくらいは、予《かね》て聞いて、小児心《こどもごころ》にも方角を知っていた。そして迷子《まいご》になったか、魔に捉《と》られたか、知れもしないのに、稚《ちいさ》な者は、暢気《のんき》じゃありませんか。
それが既に気が変になっていたからであろうも知れんが、お腹《なか》が空かぬだけに一向《いっこう》苦にならず。壊れた竹の欄干《らんかん》に掴《つかま》って、月の懸《かか》った雲の中の、あれが医王山と見ている内に、橋板《はしいた》をことこと踏んで、
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