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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 これはと思ふ、右も、左も、前の枝も、何の事はないまるで充満。
 私は思はず恐怖の声を立てて叫んだ、すると何と? 此時は目に見えて、上からぼたり/\と真黒な痩せた筋の入つた雨が体へ降かゝつて来たではないか。
 草鞋を穿いた足の甲へも落ちた上へ又累り、竝んだ傍へ又附着いて爪先も分らなくなつた、然うして活きてると思ふだけ脈を打つて血を吸ふやうな、思ひなしか一ツ一ツ伸縮をするやうなのを見るから気が遠くなつて、其時不思議な考へが起きた。

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