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『草迷宮』
鏡花とアンティークと古書の小径
目を擦《こす》り、目を〓《みは》り、目を拭いいる客僧に立別れて、やがて静々――狗の
顔
した腰元が、ばたばたと前《さき》へ立ち、炎燃ゆ、と緋のちらめく袖口で音なく開けた――雨戸に鏤《ちりば》む星の首途。十四日の月の有明に、片頬を見せた風采《とりなり》は、薄雲の下に朝
顔
の莟の解けた風情して、うしろ髪、打揺ぎ、一度蚊帳を振返る。
1495/1510
1496/1510
1497/1510
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