検索結果詳細


 『人魚の祠』 青空文庫

 談話《はなし》の聴人《きゝて》は皆婦人で、綺麗な人が大分《だいぶ》見えた、と云ふ質《たち》のであるから、羊羹、苺、念入《ねんいり》に紫袱紗で薄茶の饗応《もてなし》まであつたが――辛抱《しんばう》をなさい――酒と云ふものは全然《まるで》ない。が、予《かね》ての覚悟《かくご》である。それがために意地汚《いぢきたな》く、帰途《かへり》に恁うした場所へ立寄つた次第ではない。
 本来なら其の席で、工学士が話した或種《あるしゆ》の講述を、こゝに筆記でもした方が、読まるゝ方々の利益なのであらうけれども、それは殊更《ことさら》に御容を願ふとして置く。

 14/122 15/122 16/122


  [Index]