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 『日本橋』 青空文庫

「枕を持って、下階の女房の中へ寝に行きました、……一度でも芸者と遊んで、そのくらいな事が分らない。――さあ、ちゃんとして見て頂戴、サの字が見えない? 姉さんに肖ない?……ええ、焦ったい。」
 と襖に縋って、暗い方へ退る男と、明く浮いた枕を見交わす。
「姉さんで可愛がられるのに不足なら、妹にまけて可愛がられて上げましょう。従姉妹になってなかよくしましょう。許嫁でも、夫婦でも、情婦でも、私、まけるわ、サの字だから。鬼にでも、魔にでも、蛇体にでも、何にでもなって見せてよ、芸人ですもの。」

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