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『薬草取』 青空文庫
向《むこう》の山に、猿が三疋《びき》住みやる。中の小猿が、能《よ》う物《もの》饒舌《しゃべ》る。何と小児《こども》ども花折《はなお》りに行《ゆ》くまいか。今日の寒いに何の花折りに。牡丹《ぼたん》、芍薬《しゃくやく》、菊の花折りに。一本折っては笠に挿《さ》し、二本折っては、蓑《みの》に挿し、三枝《みえだ》四枝《よえだ》に日が暮れて……とふと唄いながら。……
何となく心に浮んだは、ああ、向うの山から、月影に見ても色の紅《くれない》な花を採って来て、それを母親の髪に挿したら、きっと病気が復《なお》るに違いないと言う事です。また母は、その花を簪《かんざし》にしても似合うくらい若かったですな。」
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