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 『日本橋』 青空文庫

 掻巻の裾を渚のごとく、電燈に爪足白く、流れて通って、花活のその桜の一枝、舞の構えに手に取ると、ひらりと直って、袖にうけつつ、一呼吸籠めた心の響、花ゆらゆらと胸へ取る。姉の記念にやわ劣るべき花柳の名取の上手が、思のさす手を開きしぞや。
 その枝ながら、袖を敷いた、花の霞を裳に包んで、夢の色濃き萌黄のに、鴛鴦の翼に肩を浮かせて、向うむきに潰島田。玉の緒|揺ぐ手柄の色。
「葛木さん。」

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