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 『湯島の境内』 青空文庫

早瀬 血を吐く思いで俺も云った。小芳さんも、傍《そば》で聞く俺が極《きま》りの悪いほど、お前の心を取次いでくれたけれど、――四の五の云うな、一も二もない――俺を棄てるか、婦《おんな》を棄てるか、さあ、どうだ――と胸つきつけて言われたには、何とも返す言葉がなかった。今もって、いや、尽未来際《じんみらいざい》、俺は何とも、他《ほか》に言うべき言葉を知らん。
お蔦 (間)ああ、分りました。それで、あの、その時に、お前さん、女を棄てます、と云ったんだわね。
早瀬 堪忍しておくれ、済まない、が、確《たしか》に誓った。

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