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 『義血侠血』 青空文庫

 金沢なる浅野川の磧《かわら》は、宵々ごとに納涼の人出のために熱了せられぬ。この節を機として、諸国より入り込みたる野師らは、磧も狭しと見世物小屋を掛け聯《つら》ねて、猿芝居、娘軽業《かるわざ》、山雀《やまがら》の芸当、剣の刃渡り、活き人形、名所の覗き機関《からくり》、電気手品、盲人相撲《めくらずもう》、評判の大蛇、天狗の骸骨、手なし娘、子供の玉乗りなどいちいち数うるに遑《いとま》あらず。
 なかんずく大評判、大当たりは、滝の白糸が芸なり。太夫滝の白糸は妙齢一八、九の別品にて、その技芸は容色と相称《あいかな》いて、市中の人気山のごとし。されば他はみな晩景の開場なるにかかわらず、これのみひとり昼夜二回の興行ともに、その大入りは永当《えいとう》たり。

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