検索結果詳細
『龍潭譚』
青空文庫
おもての方さざめきて、何処《いずく》にか行きをれる姉上帰りましつと覚し、襖いくつかぱたぱたと音してハヤここに来たまひつ。叔父は室の外にさへぎり迎へて、
「ま、やつと取返したが、縄を解いてはならんぞ。もう眼が血走つてゐて、すきがあると駈け出すぢや。
魔
《エテ》どのがそれしよびくでの。」
と戒めたり。いふことよくわが心を得たるよ、しかり、隙だにあらむにはいかでかここにとどまるべき。
157/186
158/186
159/186
[Index]