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『義血侠血』 青空文庫
時まさに午後一時、撃柝《げきたく》一声、囃子は鳴りを鎮むるとき、口上は渠がいわゆる不弁舌なる弁を揮いて前口上を陳べ了われば、たちまち起こる緩絃《かんげん》朗笛の節を履《ふ》みて、静々歩み出でたるは、当座の太夫元滝の白糸、高島田に奴元結《やっこもとゆ》い掛けて、脂粉こまやかに桃花の媚びを粧い、朱鷺色縮緬の単衣《ひとえ》に、銀糸の浪の刺繍《ぬい》ある水色絽の〓〓《かみしも》を着けたり。渠はしとやかに舞台よき所に進みて、一礼を施せば、待ち構えたりし見物は声々に喚きぬ。
「いよう、待ってました大明神様!」
「あでやかあでやか」
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