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 『日本橋』 青空文庫

「事態、私も怪訝に堪えんもんで、早急とはなしに、本郷方面へ、同僚の筋を手繰って捜りを入れると、葛木晋三と云う医学士はいかにもあるじゃね、そしてです、それは医科に勤めておらるるが、内科、外科、乃至婦人科、何でもないのじゃ。大学内のその、生理学教室に居って研究をされつつある……」
 と真にお孝に打傾いて、左の手の自脈を取りつつ、
「まるでこの方には関係ない。純粋のその学者じゃとある。で、なお怪いですわい。その晩の挙動なり、……あの余り……貴方の前じゃけれどもが、風采の上らん、痩せた、薄髯のある、背の屈んだ、こう、突くとひょろひょろっとしそうな、人に口を利くにおどおどする、初心らしい、易っぽい、容子と云うのがじゃね、

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