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『婦系図』 青空文庫
お妙はずんずん小使について廊下を引返《ひっかえ》しながら、怒ったような顔をして、振向いて同じように胸の許を擦《さす》って見せた。
「応接室《ま》でござりますわ。」
教員室の前を通ると、背後《うしろ》むきで、丁寧に、風呂敷の皺を伸《のば》して、何か包みかけていたのは習字の教師。向うに仰様《のけざま》に寝て、両肱《りょうひじ》を空に、後脳を引掴《ひッつか》むようにして椅子にかかっていたのは、数学の先生で。看護婦のような服装で、ちょうど声高に笑った婦《おんな》は、言わずとも、体操の師匠である。
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