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 『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

 明治二十九年一月、旧冬より病を推して、起稿したる「海城発電」「琵琶伝」「化銀杏」三編、一は太陽に、一は国民の友に、一は青年小説に、出づ。世評皆喧し、褒貶相半ばす。否、寧ろ罵評の包囲なりし。五月、小石川大塚町に居を卜(ぼく)し、祖母を迎ふ。年七十七。東京に住むを喜びて、越前国春日野峠を徒歩して上りたり。母の感化による。「龍潭譚」小説六佳選に出づ。めざまし草の批評に鑑み、「九ツ谺」と改めむとせしが、いま同じ題を存す。「一之巻」「二之巻」を、月をついで文芸倶楽部に連載し初む。十月より読売新聞に「照葉狂言」。――此の頃笹川臨風、気軽に大塚の長屋に訪(と)ひ来たり、ともに十二社(そう)に遊び、酒のまずに柿をかじる。

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