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 『日本橋』 青空文庫

 国手、一個の書架の抽斗、それには小説、伝奇の類が大分|帙を揃えて置かれた――中から、金唐革の手箱を、二個出して、それを開けると無造作に、莞爾々々しながら卓子の上に並べられた。一銭雛じゃね、土人形五個なのです。が、白い手飾の、あの綺麗な手で扱われると、数千の操糸を掛けたより、もっと微妙な、繊細な、人間のこの、あらゆる神経が、右の、厳粛な、緻密な、雄大な、神聖な器械の種々から、清い、涼い、芬と薬の香のする室の空間を顫動させつつ伝って、雛の全身に颯と流込むように、その一個々々が活きて見える……
 就中、丈、約七寸|許のしい女の、袖には桜の枝をのせて、ちょっとうつむいた、慄然するような、京人形。……髪は、」
 と言い掛けて、お孝の姿を更めて視て、

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