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 『外科室』 青空文庫

 予は高峰とともに立ち上がりて、遠くかの壮佼《わかもの》を離れしとき、高峰はさも感じたる面色《おももち》にて、
 「ああ、真のの人を動かすことあのとおりさ、君はお手のものだ、勉強したまえ」
 予は画師たるがゆえに動かされぬ。行くこと数《す》百歩、あの樟《くす》の大樹の鬱蓊《うつおう》たる木の下蔭《したかげ》の、やや薄暗きあたりを行く藤色の衣《きぬ》の端を遠くよりちらとぞ見たる。

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