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 『縁結び』 青空文庫

「土蔵がずッしりとあるだけに、いつも火の気のないような、しんとした、大きな音じゃ釜《かま》も洗わないといった家が、夜になると、何となく灯《あかり》がさして、三味線《しゃみせん》太鼓《たいこ》の音がする。時々どっと山颪《やまおろし》に誘われて、物凄《ものすご》いような多人数《たにんず》の笑声《わらいごえ》がするね。
 何ッて、母親《おふくろ》の懐《ふところ》で寝ながら聞くと、これは笑っているばかり。父親《おやじ》が店から声をかけて、魔物が騒ぐんだ、恐《こわ》いぞ、と云うから、乳へを押着《おッつ》けて息を殺して寝たっけが。

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