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 『国貞えがく』 青空文庫

 時雨の雲の暗い晩、寂しい菜で夕餉が済む、と箸も下に置かぬ前《さき》から、織次はどうしても持たねばならない、と言って強請《ねだ》った、新撰物理書という四冊ものの黒表紙。これがなければ学校へ通われぬと言うのではない。科目は教師が黒板《ボオルド》に書いて教授するのを、筆記帳へ書取って、事は足りたのであるが、皆が持ってるから欲しくてならぬ。定価がその時金《きん》八十銭と、覚えている。

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