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 『日本橋』 青空文庫

 また、山の中に、山猫と云うのが居る、形はかつて見せん。見たものは無いと云うです。ただ深更に及んでその啼声じゃね、これを聞くと百獣|悉く声を潜むる。鳥が塒で騒ぐ。昔の※々じゃと云う。非常に淫猥な獣じゃそうでね、下宿した百姓の娘などは、その声を聞くと震えるですわい、――現在私も、それは知っとる。
 炭焼の奴が、女を焼いて食った事件もある。
 そういう事は知っとるが、趣味と情愛の見聞が少かったためじゃろうか、医学士が生理学教室で、雛を祭る、と云うは信じなかった。――吹く風はなこその関と思えどもですわ。」

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