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『国貞えがく』
青空文庫
七
親父はその晩、一合の酒も飲まないで、燈火の赤黒い、火屋《ほや》の亀裂《ひび》に紙を貼った、笠の煤けた洋燈《ランプ》の下《もと》に、膳を引いた跡を、直ぐ長火鉢の向うの細工場《さいくば》に立ちもせず、袖に継のあたった、黒のごろの半襟の破れた、千草色《ちぐさいろ》の半纏の片手を懐に、膝を立てて、それへ頬杖ついて、面長な思案顔を重そうに支えて黙然《だんまり》。
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