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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 取られて取られて、とうとう、のう、御主人へ持って行く、一樽のお代を無《みな》にしました。処で、自棄じゃ。賽の目が十に見えて、わいらの頭が五十ある、浜がぐるぐる廻るわ廻るわ。さあ漕がば漕げ、殺さば殺せ、とまたふんぞった時分には、ものの一斗ぐらい嘉吉一人で飲んだであろ。七人のあたまへ四斗樽、これがあらかた片附いて、浜へ樽を上げた時、重いつもりで両手をかけて、えい、と腰を切った拍子抜けに、向うへのめって、樽が、ばっちゃん、嘉吉がころり、どんとのめりましたきり、早やんだも同然。

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