検索結果詳細


 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 良《やゝ》ありて戸を開き差出したる得三のは、眼据つて唇わなゝき、四辺《あたり》を屹と見廻して、「八蔵、八蔵、と呼懸けたり。八蔵は入来りぬ。得三は声を潜《ひそ》め、「八、一寸爰《こゝ》へ来い。「へい、何、何事でございます。と人形の袖を潜つて密室の戸口に到れば、得三は振返つて後を指《ゆびさ》し、「此を。……八蔵は覗き込みて反り返り、「ひやつ、高田様《さん》が自殺をしたッ。と叫ぶを、「叱《しつ》!声高しと押止めて、眼を見合はせ少時《しばらく》無言《だんまり》、此時一番鷄の声あり。

 166/219 167/219 168/219


  [Index]