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 『古狢』 青空文庫

 と白い手と一所に、銚子《ちょうし》がしなうように見えて、水色の手絡《てがら》の円髷《まるまげ》が重そうに俯向《うつむ》いた。――嫋《なよや》かな女だというから、その容子《ようす》は想像に難くない。欄干に青柳の枝垂《しだ》るる裡《なか》に、例の一尺の岩魚《いわな》。〓《うぐい》と蓴菜《じゅんさい》の酢味噌。胡桃《くるみ》と、飴煮《あめに》の鮴《ごり》の鉢、鮴とせん牛蒡《ごぼう》の椀なんど、膳を前にした光景が目前《めさき》にある。……
「これだけは、密《そっ》と取りのけて、お客様には、お目に掛けませんのに、どうして交っていたのでございましょうね。」――


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