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 『春昼』 泉鏡花を読む

「段々お宗旨が寂れます。此方は何お宗旨だか知りませんが。
 対手は老朽ちたものだけで、年紀の少い、今の学校生活でもしたものには、迚も済度はむづかしい、今さら、観音でもあるまいと言ふやうなお考へだから不可んのです。
 近頃は爺婆の方が横着で、嫁をいぢめる口叱言を、お念仏で句読を切つたり、膚脱で鰻の串を横銜へで題目を唱へたり、……昔からも然う云ふのもなかつたんぢやないが、まだ/\胡散ながら、地獄極楽が、幾干か念頭にあるうちは始末がよかつたのです。今ぢや、生悟りに皆が悟りを開いた顔で、悪くすると地獄の絵を見て、こりや出来が可い、などと言ひ兼ねません。

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