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『日本橋』
青空文庫
「ちょっと、木戸のこの柱に、こんなものが貼って有るだろう。」
お千世は、薄気味悪そうに、お孝の袂に掴まりながら、直ぐ目の前なを、爪立って覗くように、と見ると、比羅紙の、およそ二枚|凧ぐらいな大きさの真中にぼつりぼつりと筆太に、南無阿弥陀仏、と書いたのが、じめじめとして、さながら、
水
から這上った流灌頂のごとく、朦朧として陰気に見える。
1689/2195
1690/2195
1691/2195
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