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 『親子そば三人客』 従吾所好

「はい、はい、」
 親と、客へ二ツ返事で、お君といふ娘、向をかへると手を上へ、一寸爪立つたが、真暗な棚の、貼札を正面にならんでゐる、罎の中から一本抜いて、直ぐ下の板の間へ、無造作に十能を差置いて、小刻に、やがて、煤けた柱で劃つたやう、磨硝子を嵌めたる如き、湯気のむら/\として、洋燈〈ランプ〉の朦朧とある中へ見えなくなる。

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