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 『星あかり』 泉鏡花を読む

 しかし、其まゝ素直に立つてるのが、余り辛かつたから又た歩いた。
 道の両側しばらくのあひだ、人家が断えては続いたが、いづれも寐静まつて、けた藁屋のなかに、何家も何家も人の気勢がせぬ。
 其の寂寞を破る、跫音が高いので、夜更に里人の懐疑を受けはしないかといふ懸念から、誰も咎めはせぬのに、抜足、差足、音は立てまいと思ふほど、なほ下駄の響が胸を打つて、耳を貫く。

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