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 『国貞えがく』 青空文庫

 「だって、欲いんだもの。」と言い棄てに、ちょこちょこと板の間を伝って、だだッ広い、寒い台所へ行く、と向うの隅に、霜が見える……祖母《おばあ》さんが頭巾もなしの真白な小さなおばこで、皿小鉢を、がちがちと冷い音で洗ってござる。
 「買っとくれよ、よう。」
 と聞分けもなく織次がその袂にぶら下った。流《ながし》は高い。走りもとの破れた芥箱《ごみばこ》の上下を、ちょろちょろと鼠が走って、豆洋燈《まめランプ》が蜘蛛の巣の中に茫とある……

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