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 『龍潭譚』 青空文庫

 「私あもう気でも違ひたいよ。」としみじみと掻口説きたまひたり。いつのわれにはかはらじを、何とてさはあやまるや、世にただ一人なつかしき姉上までわがを見るごとに、気を確《たしか》に、心を鎮めよ、と涙ながらいはるるにぞ、さてはいかにしてか、心の狂ひしにはあらずやとわれとわが身を危《あや》ぶむやうそのたびになりまさりて、果はまことにものくるはしくもなりもてゆくなる。

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