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 『日本橋』 青空文庫

 意気地も張も葉がくれの闇に、男を思うあわれさよ。鶴を折る手と、中指に、白金の白蛇輝く手と、合せた膝に、三筋五筋|観世捻、柳の糸に、もつれ縺るる、鼓の緒にも染めてまし。
 あわれ、かかる時は、あすの逢瀬を楽みに、帰途を案ずるも心ゆかし、寐られぬ夜半の待人掛ける、小さな犬も拵え交ぜて、お千世に背打たれて微笑みもしたが。
 柳の葉の散る頃は、――続いて冬枯の二日月、鬢櫛の折れたる時は――

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