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『古狢』
青空文庫
その長襦袢で……明保野で寝たのであるが、朱鷺色《ときいろ》の薄いのに雪輪を
白
く抜いた友染である。径《みち》に、ちらちらと、この友染が、小提灯で、川風が水に添い、野茨《のばら》、卯《う》の花。且つちり乱るる、山裾の草にほのめいた時は、向瀬《むこうせ》の流れも、低い磧《かわら》の撫子《なでしこ》を越して、駒下駄に寄ったろう。……
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