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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(御免なさいまし、)といつたがものもいはない、首筋をぐつたりと、耳を肩で塞ぐほどを横にしたまゝ小児らしい、意味のない、然もぼつちりした目で、じろじろと門に立つたものを瞻める、其の瞳を動かすさへ、おつくふらしい、気の抜けた身の持方。裾短かで袖は肘より少い、糊気のある、ちやん/\を着て、胸のあたりで紐で結へたが、一ツ身のものを着たやうに出ツ腹の太り肉、太鼓を張つたくらゐに、すべ/\とふくれて然も出臍といふ奴、南瓜の蔕ほどな異形な者を片手でいぢくりながら幽霊の手つきで、片手を宙にぶらり。

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