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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 どの道訳を立ていでは、主人方へ帰られる身体《からだ》ではござりませぬで、一先ず、秋谷の親許へ届ける相談にかかりましたが、またこのお荷物が、御覧の通りの大男。それに、はい、のめったきり、捏《てこ》でも動かぬに困じ果てて、すっぱすっぱ煙草を吹かすやら、お前様、嚔《くしゃみ》をするやら、向脛《むかはぎ》へ集《たか》る蚊を踵で揉殺すやら、泥に酔った大鮫のような嘉吉を、浪打際に押取巻《おっとりま》いて、小田原評定。持て余しておりました処へ、丁ど荷車を曳きまして、藤沢から一日路、この街道つづきの、長者園の土手へ通りかかりましたのが……」

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