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『婦系図』 青空文庫
と密《そっ》と肩に手を掛けたが、お妙の振払いもしなかったのは、泣入って、知らなかったせいであったに……
河野英吉嬉しそうな顔をして、
「さあ、機嫌を直してお話しなさい。」と云う時、きょときょと目で、お妙の俯向いた玉の頸《うなじ》へ、横から徐々《そろそろ》と頬を寄せて、リボンの花結びにちょっと触れて、じたじたと総身を戦《わなな》かしたが、教頭は見て見ぬ振の、謂《おも》えらく、今夜の会計は河野持《もち》だ。
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