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 『婦系図』 青空文庫

 雨を帯びたる海棠《かいどう》に、廊下の埃《ほこり》は鎮まって、正午過《ひるすぎ》の早や蔭になったが、打向いたる式台の、戸外《おもて》は麗《うららか》な日なのである。
 ト押重《おっかさな》って、木《こ》の実の生《な》った状《さま》にを並べて、斉《ひと》しくお妙を見送った、四ツの髯の粘り加減は、蛞蝓《なめくじ》の這うにこそ。

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