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 『婦系図』 青空文庫

 お茶漬さらさら、大好《だいすき》な鰺《あじ》の新切で御飯が済むと、硯《すずり》を一枚、房楊枝《ふさようじ》を持添えて、袴を取ったばかり、くびれるほど固く巻いた扱帯《しごき》に手拭を挟んで、金盥《かなだらい》をがらん、と提げて、黒塗に萌葱の綿天の緒の立った、歯の曲った、女中の台所穿《ばき》を、雪の素足に突掛《つっか》けたが、靴足袋を脱いだままの裾短《すそみじか》なのをちっとも介意《かま》わず、口から木戸を出て、日の光を浴びた状《さま》は、踊舞台の潮汲《しおくみ》に似て非なりで、藤間が新案の(羊飼。)と云う姿。

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