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『半島一奇抄』 青空文庫
「乗ってるんですね!その上にいま……何だか足が擽《くすぐ》ったいようですね。」
記者はシイツに座をずらした。
「いえ、決して、その驚かし申すのではありません。それですから、弁天島の端なり、その……淡島の峯から、こうこの巌山を視《なが》めますと、本で見ました、仙境、魔界といった工合《ぐあい》で……どんなか、拍子で、この崖《がけ》に袖《そで》の長い女でも居ようものなら、竜宮から買ものに顕《あら》われたかと思ったもので。――前途《さき》の獅子浜、江の浦までは、大分前に通じましたが、口野からこちら……」
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