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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 叔母に下枝、藤とてしき二人の娘あり。我とは従兄妹同士にていづれも年紀《とし》は我より少《わか》し。多くの腰元に斉眉《かしづ》かれて、荒き風にも当らぬ花なり。我は食客の身なれども、叔母の光を身に受けて何不自由無く暮せしに、叔母はさる頃病気《やまひ》に懸り、一時に吐血して其夕敢なく逝《みまか》りぬ。今より想へば得三が毒殺なせしものなるべし。さる悪人とは其頃には少しも思ひ懸けざりき。

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