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 『婦系図』 青空文庫

 多分はそれだろう、口真似《くちまね》をするのは、と当りをつけた御用聞きの酒屋の小僧は、どこにも隠れているのではなかった。
 眉を顰《ひそ》めながら、その癖恍惚《うっとり》した、迫らない色《かおつき》で、今度は口ずさむと言うよりもわざと試みにククと舌の尖《さき》で音を入れる。響に応じて、コロコロと行《や》ったが、こっちは一吹きで控えたのに、先方《さき》は発奮《はず》んだと見えて、コロコロコロ。

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