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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 快く頷いて、北陸地方を行脚の節はいつでも杖を休める香取屋といふのがある、旧は一軒の旅店であつたが、一人女の評判なのがなくなつてからは看板を外した、けれども昔から懇意な者は断らず泊めて、老人夫婦が内端に世話をして呉れる、宜しくば其へ、其代といひかけて、折を下に置いて、
「御馳走は人参と干瓢ばかりぢや。」
 と呵々と笑つた、慎み深さうな打見よりは気の軽い。

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