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 『歌行燈』 従吾所好

 と弥次郎兵衛。湊屋の奥座敷、此れが上段の間とも見える、次に六畳の附いた中古の十畳。障子の背後は直ぐに縁、欄干にずらりと硝子戸の外は、煙渺として、曇らぬ空に雲かと見る、長洲の端に星一つ、に近く晃らめいた、揖斐川の流れの裾は、潮〈うしほ〉を篭めた霧白く、月にも苫を伏せ、蓑を乾す、繋船〈かゝりぶね〉の帆柱が森差〈すく/\〉と垣根に近い。其処に燭台を傍にして、火桶に手を懸け、怪訝な顔して、

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