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『婦系図』
青空文庫
お妙はそれまで気がつかなかった。呼《よば》れて、手を留《とめ》て主税を見たが、水を汲んだ名残《なごり》か、顔の色がほんのりと、物いわぬ目は、露や、玉や、およそ声なく言《ことば》なき世のそれらの、美しいものより美しく、歌よりも心が籠った。
「また、
水
いたずらをしているんですね。」
と顔を視《なが》めて元気らしく、呵々《からから》と笑うと、柔《やさし》い瞳が睨むように動き止まって、
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