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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

 これは、さもありそうな事で、一座の立女形《たておやま》たるべき娘さえ、十五十六ではない、二十《はたち》を三つ四つも越しているのに。――円髷は四十近《ぢか》で、笛吹きのごときは五十にとどく、というのが、手を揃え、足を挙げ、腰を振って、大道で踊ったのであるから。――もっと深入した事は、見たまえ、ほっとした草臥《くたび》れた態《なり》で、真中《まんなか》に三方から取巻いた食卓《ちゃぶだい》の上には、茶道具の左右に、真新しい、擂粉木《すりこぎ》、および杓子《しゃくし》となんいう、世の宝貝《たからもの》の中に、最も興がった剽軽《ひょうきん》ものが揃って乗っていて、これに目鼻のつかないのが可訝《おかし》いくらい。ついでに婦《おんな》二人のが杓子と擂粉木にならないのが不思議なほど、変な外出《そとで》の夜であった。

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